音楽家と就活

  • 2018.09.12 Wednesday
  • 09:23

JUGEMテーマ:音楽活動

 

 

私はアメリカの大学院を卒業してから、日本の企業に中途採用社員として就職しました。

教育に関わる仕事ではあったのですが、一般企業の職務はそれまで勉強をしてきた分野とは大分異なっていたため、音楽という本来の自分の強みを100%活かせる業務ではありませんでした。

2017年に独立して音楽に専念することにしてからは、過去の経験を活かせる業務ということで、かなり余裕のある日常生活も送れていますし、出版や音楽活動に関わる経済効果、社会貢献度は制約の多い会社員時代とは段違いです。

 

では始めから就活などせずに、独立すれば良かったのかと言えば、そうではないと感じています。

私の二親等以内の親族は全員、公務員、教員、警官、個人事業主、電電公社、旧日本軍など、高校や大学卒業後に新卒として一般企業に就職した経験のある人がほとんどおらず、私自身会社員や総合職にあまり馴染みがありませんでした。

そんな中一般企業の中で働いてみて、初めて「こういう世界観があるのか」と考えさせられました。

 

会社員の経験は独立してから、かなり役に立っていると思います。

経理や契約書の書き方などの実務的な部分もそうですが、それ以上に取引先や周囲の被雇用者が仕事に対してどのように取り組んでいるのかを考えられる想像力、所謂BtoBビジネスの基本が身に付いたという部分が大きいと思います。

 

例えば本やCDの出版一つとってみても出版社、印刷会社、プレス工場、取次会社、小売店と様々な人の手を流れて、漸く読者なりリスナーなりの手に届くわけです。

そしてそのうちの一つでも欠けてしまったら流通はストップしてしまいます。

アーティストにとっては「自分の作品こそが全て」であるのですが、その流通に不可欠な企業にとっては、手がけている膨大な量の商品のうちの一つに過ぎないということです。

 

例えばある作家が書店と本の並べ方に関して喧嘩をしたとします。

書店の店員は「もう絶対にあんたの本はうちでは取り扱わない!」となります。

仮に毎日店舗で10冊売れる人気作家だとしても、書店の売り上げからすれば微々たるものです。

例えば書籍の価格が1,000円だとしたら一日の売り上げは10,000円、卸価格は大体80%くらいのものですから、店舗の一日の利益は2,000円に過ぎません。

 

膨大な商品を揃えた書店に対し作家の作品数はたかが知れています。

今の時代、SNSなどで悪い評判はすぐに拡散されるので、他店でも取り扱いが渋ってしまいます。

企業の正規社員の場合、個人の業績が悪くとも即減給とはなりませんが、個人事業主の場合は業績悪化=即減給ですから、印税で生活しているような作家にとっては死活問題です。

 

私が一般企業に勤めている際には、営業や手配業務といった、商品やサービスを「流通させる」側として働いていましたが、現在は商品やサービスを「開発する」側として働いています。

とかくアーティストと言われる職業の方は、作品を作る側が優位に立っていると考えがちですが、実際には逆で、読者やリスナーの手に作品が届くかどうかは流通させる側の匙加減であり、書店の商品数が膨大であるように、その人の代わりなんていくらでもいるのです。

とういことで、BtoBビジネスでの謙虚さというか、取引先への感謝の気持ちを持つことが大変重要だと認識できるという意味では、音楽家も一度就職してみて損は無いと思います。

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